下痢・肺炎について |
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感染症対策に何をすればよいですか |
まず栄養を充足させ牛の抵抗力を上げること、飼養管理、環境を改善し病原体の蔓延を防ぎ牛のストレスを軽減させましょう。
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代用乳給与量を増すと病気にかかりにくくなりますか |
冬場など寒冷期には給与量を増すと疾病発生率が下がったとの報告があります。
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下痢の発生状況について |
全国的にはコクシジウム病、コロナウィルス病、ロタウィルス病、大腸菌症、クリプトスポリジウム症、サルモネラ症などが報告されています。管内ではコクシジウム、ロタ、コロナなどが原因となることが多いようです。
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糞便の性状や観察方法をおしえてください |
脱水、発熱などによる固形便、胆汁の分泌不足による灰白色便、脂肪吸収不足による白色便、感染症による水様便、腸管の出血による鮮血便やタール状便、コクシジウム病やクロストリジウム病などの炎症や薬剤副作用による偽膜性腸炎などがあります。
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下痢の発生時期について |
生後1週間くらいまでにロタウィルスや大腸菌症、3週齢くらいまでにコロナウィルスやクリプトスポリジウム病、3週齢以降にコクシジウム症が多いと言われています。
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コクシジウム病について |
コクシジウム病はE.bovisをはじめ多種のEimeriaが関与し、全国的に高率な汚染状況が認められます。感染状況によりいろいろな程度の下痢症状を示し、腸管粘膜上皮細胞に障害を与え栄養吸収不良による発育遅延が多く見られます。
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コクシジウム病の発生状況について |
農場により異なりますが全国的には夏場に多いようです。
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コクシジウム病対策について |
2週齢でのバイコックス投与が効果的です。加えて環境対策、消毒の徹底による環境中のオーシスト対策が重要です。
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単純性下痢症の対策について |
悪臭や粘液、血液混入などがなく、活力、食欲があり発熱がないような単純性下痢症では抗菌剤を使わずベリノール末などを投与し様子を見ます。脱水があればサラーロンなど経口補液剤で補液してあげます。また冬場など寒冷時は保温することも必要です。
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子牛の消化管感染症対策について |
アースジェネターやボバクチンなどの生菌剤の利用やヒーター、ジャケットなどを用いた寒冷時の保温、経口補液による脱水症状改善、消毒の徹底による病原体拡散の防止などがあげられます。
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BRDCとは何ですか |
BRDC(牛呼吸器病症候群)はウィルス、細菌等の病原微生物とストレスなどによる免疫状態の変調が絡み合って発生する呼吸器疾病・症候群のことです。
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なぜBRDCを克服できないのですか |
多頭飼育化による病原体感染率の上昇、輸送導入時のストレスや病原体の侵入、効率化優先のための管理不足などが原因として考えられます。
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BRDC対策について |
栄養状態の改善、飼養環境の改善、密飼いや群構成の見直しにより抗病性を上げ病原体のまん延を防ぐ。発症前の予防処置、早期の治療など。
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肺病変から分離される病原体について |
IBR、RS、PI3、BVDなどのウイルス、 マンヘミア・ヘモリチカ (Mannheimia haemolytica) 、 パスツレラ マルトシダ (Pasteurella multocida)、ヒストフィリス・ソムニ (Histophilus somni)、アルカノバクテリウム・ピオゲネス (Arcanobacterium pyogenes) 、マイコプラズマ類など。
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抗菌剤を用いた予防について |
導入時ミコチル投与により発症率の減少、治癒率向上が期待できます。
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牛呼吸器病予防ワクチンについて |
5種混合生ワクチン(IBR、BVD、PI3、RS、AD3)、RS生ワクチン、5種混合不活化ワクチン(IBR、BVD1、BVD2、PI3、RS)、鼻空内投与ワクチンTSV-2などがあります。
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繁殖について |
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分娩後の子宮の回復について |
分娩直後の子宮の重さは10Kgほどで、修復にはオキシトシンとPGF2αが関与し、子宮の収縮により悪露が14日程度で排出されます。子宮の収縮は約4日でなくなり大きさは5日ほど、長さは2週間ほどで半減し1ヶ月程度で修復が完了します。後産は7~10日ほどではがれ落ちます。
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分娩後の卵巣の回復について |
分娩後10~15日頃に初回の排卵が起こり、30~35日で2回目の排卵があり発情行動を示し、その後21日で発情周期を繰り返す。回復の程度は難産、胎盤停滞、栄養状態、授乳、泌乳量などの要因で異なります。
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繁殖障害の原因となる解剖学的異常について |
異性多胎に見られるフリーマーチンや生殖器、副生殖器の欠損、遺伝的卵巣形成不全など先天的異常、また難産介助や人工授精、子宮卵巣の処置により生殖器、副生殖器の損傷、狭窄、閉塞など起こします。子宮や腹膜の炎症は卵管采や卵巣に波及して癒着を起こすこともあります。
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繁殖障害の原因となるホルモン分泌の異常について |
性腺刺激ホルモンの分泌不足による黄体形成不全、プロジェステロン不足による不受胎などがあります。GnRHや性腺刺激ホルモンのサージが欠如すると卵胞は排卵せず卵胞嚢腫となりエストロジェン分泌が亢進することがあります。
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繁殖障害の原因となる飼養管理の不良について |
過肥や低栄養では繁殖成績は悪く、授乳や泌乳による分娩後の体重減少は卵巣活動の遅延や卵胞発育障害を起こします。また適度の運動は分娩後の初回排卵や発情発現を良好にし受胎までの受精回数を減少させます。ストレスの多い環境下では血中コルチコイドが上昇しホルモン分泌異常が起こるといわれています。
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微生物感染による繁殖障害について |
アカバネ、チュウザン、アイノ、IBR、BVD-MD、イバラキ病ウィルス等のウィルスの感染が不受胎や流産などの原因となります。また細菌ではブドウ球菌やレンサ球菌などの常在菌も繁殖障害や流産の原因になることがあります。
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繁殖障害の人為的な原因について |
発情を見逃す、発情開始時期を把握できないことにより受精適期を逃す、また人工授精技術や繁殖障害診断技術の不足などがあります。
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卵胞発育障害について |
卵胞の発育が全く無い、またはある程度まで発育するが排卵することなく閉鎖退行し無発情となるもので卵巣発育不全、卵巣静止、卵巣萎縮などがあります。治療はヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、酢酸フェルチレリン、酢酸ブセレリンの投与などです。
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卵胞嚢腫について |
卵胞が排卵することなく成熟卵胞の大きさを超えて異常に大きくなり存続する。嚢腫化した卵胞の大きさや個数はいろいろで、原因はLHサージの不足、欠如といわれてます。治療は酢酸ブセレリン、酢酸フェルチレリン、hCG投与、CIDERやPRIDによる治療があります。
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黄体嚢腫について |
卵胞が排卵することなく正常範囲を超えて異常に大きくなり、卵胞壁の一部または全部が黄体化し存続する。通常無発情で、治療はPGF2αの投与などがあります。
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排卵障害について |
卵巣において卵胞の発育がみられるものの排卵に時間がかかる排卵遅延と、排卵にいたらず閉鎖退行または嚢腫化する無排卵があります。治療は酢酸フェルチレリン、酢酸ブセレリン、hCGの投与などがあります。
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鈍性発情について |
排卵や黄体形成など発情周期は正常に営まれるが発情兆候が弱いまたは現れないもの。治療は黄体期にPGF2αの投与、発情期にエストラジオール投与、イソジン液を子宮内注入、CIDERを用いた治療などがあります。
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黄体形成不全について |
排卵後黄体の形成が不良であるもの。原因はLHやFSHの分泌異常、LHレセプターの異常、黄体退行因子の異常などが考えられます。治療は酢酸ブセレリン、酢酸フェルチレリン、hCGの投与などがあります。
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黄体遺残について |
排卵後形成された黄体が長時間存在するものでその間無発情を示す場合で、治療はPGF2αの投与などがあります。
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直腸検査について |
子宮頚管を持ち上げ、後方に引き上げ子宮を骨盤腔内に持ち上げ反転させ、子宮頚管の太さ、固さ、長さなどを検査し、子宮の太さ、断面形状、収縮性、弾力性など検査します。卵巣については大きさ、形状、硬さ、弾力、卵胞や黄体の有無や個数、形状などを検査します。
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難産について |
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難産の原因について |
胎児が大きい胎児過大、胎勢の異常の胎児失位、陣痛が弱い陣痛微弱、胎児の奇形や子宮捻転などがあります。
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分娩の監視について |
膣内センサーを挿入するシステムや監視モニターシステムなどがだんだんと普及してきています。分娩の徴候には乳房や外陰部の張り、尾根部の靭帯の緩み、体温の低下などがあります。
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子牛の向きがおかしい |
分娩開始時には子牛は子宮内で横向きや仰向けなどの姿勢をとっていて、分娩が進むにつれて正常な姿勢となりますので分娩経過中に横向きや仰向けであることは異常ではありません。
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破水がおかしい |
1次破水(茶色)、2次破水(白)の順は同時のことも、逆のこともあります。
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破水後陣痛が弱くなったのですが |
破水をすると圧力が弱まりますので陣痛が一旦弱まりますが、1時間程度の内に再び強くなります。
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牽引の方向や角度について |
頭位の場合、頭と肩が陰門から出きるまでは真後ろに水平に、肩が出きったら45度ほど斜め下に引く向きを変えます。尾位の場合、太ももが完全に出きるまでは真後ろに引き、太ももが出きったあとは45度ほど斜め下に引きます。
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母牛が横になったのですが |
通常お産するときは母牛は横になって娩出します。立ったまま分娩したとき、母牛は警戒しているのかもしれません。できるだけ母牛の気が散らないようにしてあげましょう。
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逆子なんですが |
尾位(逆子)の姿勢では臍帯が伸ばされて血液の流れが悪くなることがあり、また鼻や口も最後に出てきますので呼吸も不利なため、飛節や太ももあたりが出てきたら介助を考えてよいでしょう。
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早く介助したいのですが |
早すぎる介助はかえって難産をひどくしてしまいます。無理に引っ張ると後産停滞や子宮内膜炎の原因になり、次の受胎に影響しますので必要最小限の介助を行いましょう。正常であれば陣痛開始から2~3時間待ちましょう。
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胎児の確認について |
産道に手を入れるときは手や外陰部のまわりなどをきれいに洗って消毒してから行います。失位の確認(頭位または尾位で正常か)や生死の確認(舌や足をつかんで反射があるか)を行います。
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新生子牛への対処について |
バスタオルなどでマッサージし、頭部を冷水刺激したり鼻孔を刺激するなどして自発呼吸を促します。後肢を懸垂して胎水を吐かせる方法がありますが、呼吸器を圧迫することがありますので症状をみながら慎重におこないます。子牛用のポンプ式人工呼吸器を利用するのもよい方法です。
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臍帯がつながっているんですが |
臍帯はむりに断裂させず、自然に切れるのを待ちましょう。臍帯血には幹細胞という分化能、複製能に優れた細胞があるので、臍帯血をできるだけ多く胎盤から回収させるためです。
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新生児仮死について |
出生時に自発呼吸の異常や循環不全を起こし、起立不能、頻回呼吸、チアノーゼの症状がみられることがあります。呼吸改善のためドプラム投与したり、血液ガス分析装置を使用しアシドーシスなど観察しながら治療を行います。
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流産の原因について |
母体側の原因として、栄養不良、ビタミンや微量元素の欠乏、中毒、内分泌異常、ほかの疾患に継発するものがあります。また胎児側の原因としては奇形や多胎があります。そのほかの原因として転倒や打撲によるもの、寒冷・暑熱ストレスや長時間の輸送ストレスによるものがあげられ、これが最も多いと考えられます。
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感染性流産について |
細菌性流産としてブルセラ病、レプトスピラ症、カンピロバクター症、リステリア症、クラミジア症など。ウイルス性流産として牛ウィルス性下痢・粘膜病(BVD‐MD)、牛伝染性鼻気管炎(IBR)、アカバネ病、イバラキ病、チュウザン病、アイノウィルス感染症など。アスペルギルス症などの真菌性流産、ネオスポラ症、トリコモナス症などの原虫性流産があります。
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流産の対策について |
床を滑りにくくするなど転倒の防止対策や、適切な飼養管理により妊娠牛のストレスを軽減することが重要となります。また感染性流産の原因菌の中にはワクチンにより予防可能なものもあります。多発したときや奇形胎児の場合は家畜保健所に病性鑑定依頼することもあります。
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